資金繰りのコツCash management

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投稿日 2017/08/01 資金繰りのコツ label

「社員の給料」はいくらが適正なのか。そのルールを明文化するべき理由とは?

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経営者として、いくら稼ぎたいのか――別コラムで、自分が欲しい目標額を明確に決める大切さについて触れました。

今回は、経営者自身の懐ではなく、社員の給料について、考えていきます。

実は、「自分は〇〇円、稼ぐんだ!」が具体的に定まっていない経営者ほど、社員の給与に関しても、その決め方や昇給・減給のルールについて、どこか無頓着な傾向がみられるようです。

あなたは、以下に挙げたチェックリストに、思い当たる節はないでしょうか。

  • 転職してきた社員の給与について、前の職場の給与額と本人の希望、世間の標準額に倣って、なんとなく決めた
  • そして、入社時に決めた給与額のまま、昇給も減給もしたことがない
  • 業績が良かった時に、臨時ボーナスをあげたこともあるが、特に決まったルールはない
  • 転職したいという社員を引きとめるために、給与額を引き上げたことがある
  • しかし、とくに文句や希望を言ってこない社員の給与額はそのまま

ここまで大ざっぱではないとしても、世間で言う労働分配率(粗利に占める人件費の割合)の業界平均を単純に当てはめてしまっているケースや、ボーナスに関しても、業績に関わらずなんとなく慣行で年2回、支払っているような会社も多いのではないでしょうか。

いい人材を獲得するためにも、戦略的に給与体系をルール化するべし

もちろん、リスクをとって起業した経営者と社員とでは立場が違います。
経営が苦しくなれば、最初に手を付けるべきなのが社長の給料であるように、業績連動型の経営者の懐事情に対し、社員には一定の額を保証するのが理想形です。

しかし、

  • がんばっても、がんばらなくても、給料の額が同じ
  • 部や個人で成績を上げても、評価してもらえず、成績が悪い部署と報酬が変わらない

のでは、本当に能力のある社員やデキる人材は離れ、「お気楽社員」しか残らないという事態にもなりかねません。

そう、中小企業にとって最大の経営課題である「いい人材を獲得する」ためにも、目に見える形で納得いくフェアな給与体系のルールを決め、社員と共有することが肝要なのです。

では、いかに手をつけるか。
一つめのポイントは、「一定の労働分配率を決める」こと。企業規模やビジネスモデル、今後の成長の見通しによっても正解はさまざまですが、専門家とも相談しながら明確に決めることが大事。もし、会社の業績次第で「現状のこの給料では高い」となれば、軌道修正すればいいのです。

二つめのポイントは、昇給のルールとともに、減給のルールを決めること。

「社員に給料を下げる話をするのはちょっと……」
「一度上げても、また下げるぐらいなら、最初から上げないほうが……」

と、躊躇する方もいるかもしれませんが、どちらにせよ経営が苦しくなれば、社長の給与の次には、社員の給与に手をつけざるをえないのです。

ならば、最初から一定の業績・能力連動のルールをクリアにしておいたほうが、お互いに緊張感を持って、仕事に臨めるのではないでしょうか。

「変則的な出世払い」で昇給するスタイルに踏み切った理由

ややドラスティックな昇給ルールではありますが、三つ目として私が提案したいのが、「給料の先行アップ形式」です。

実は、ある経営者からの助言を受けて当事務所で実施しているのが「仕事ができるようになったら給料を上げる」のではなく、この方式だったのです。かなりドラスティックな方法かもしれませんが、空前の人手不足時代にあって、当事務所も含め、ブランド力のない中小企業がいい人材を獲得するには、思い切ったやり方をしないと生き残れないのではないか……そう考えての決断でした。

ではその方式とはいったい、どんなやり方なのでしょうか。

通常、社員の給与を決める場合は「社員の目標設定→目標達成→給与や賞与に反映」という流れになるはずです。ですが、この方式は「目標を達成する」ことを後回しにして、まず先に給料をアップしてしまうのです。つまり、いきなり「社員の目標設定→給与引き上げ」という形をとる、ということになります。

例えばある社員の給与が、前年で月給30万円だった場合。まず明確にこちらが求めていることと昇給額を伝え、「年〇件の新規獲得の目標を達成してほしい」などの目標設定をさせたら、次の年の1月からいきなり35万に給与を引き上げてしまうのです。
そして目標を達成した場合、翌年からの給与は40万にします。また仮に目標を下回った場合でも、翌年からの給与は35万になります(翌年ぶんを先に昇給させているため)。

もちろん、専門職としてその社員が「一定の仕事の処理能力がある」ことが前提になりますが、「まず先に給与を上げてみる」という方式をとることで、社員はむしろ今まで以上に責任感とモチベーションを高く保った状態で仕事に向き合ってくれるのです。

そして、この方式をやってみて気付いたことは、経営者も社員の目標達成をサポートする気持ちが高まるという2重のメリットがあることでした。なぜなら、先に報酬を上げてしまった以上は、目標だけ掲げておいて、社員をそのまま放置しておくことはできないから。どんな目標を設定したらいいのか、社員にどのようなアプローチをしたら効果的なのか……など、経営者としてもいろいろと考えさせられる場面が生まれてきます。結果としてそれが、会社の潜在的なパワーを最大化することに繋がっていくのではないでしょうか。

そう。実は「儲かってないから、社員の給料を上げられない」ではなく、「社員の給料を上げないから、儲からない」が真実なのではないか。
“卵が先か、鶏が先か”みたいな話ですが、私はココに中小企業が生き延びるカギが隠されているのではないかと考えるのです。

会社の“売り”を社長のみに頼っている限り、先の成長は望めない

「ウチの社員は、ヤル気が足りない」
「デキる人材が入ってこない。入っても、スグに辞めてしまう」

経営者に話を聞くと、近年の人手不足もあって、社員に対するグチをよく耳にします。

結果、社長自らがプレイングマネジャーとして走り回るようなケースも多いことから、余計に「社員の賃金=コスト」という意識も働くのかもしれません。

しかし、こうした自転車操業をしている限り、事業拡大や経営力アップは望めない。
そこそこは経営が回っていたとしても、会社の“売り”を社長のみに頼っていては、その先の成長は難しいと言わざるをえません。

人件費はコストではなく、「未来に向けての投資」である。
その意識を持って、まずは給与体系の改革、明文化に着手することをお勧めします。

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