経営はキレイごとではすまない――従業員に辞めてもらったほうがいいケースもある!
会社は“儲けるための団体”であり“仲良しグループ”ではない
「従業員を大切にする」――そんな謳い文句を掲げる会社は、世の中に多く存在します。では、会社にとって従業員を大切にするとはどういうことなのか。
「従業員に辞めてもらう=従業員を大事にしていない」とは必ずしもいえないのではないか。あえて刺激的なタイトルを掲げ、雇用に関する持論を書いてみたいと思います。
大っぴらに公言することではないかもしれませんが、私の事務所では開設してから少なからずのスタッフ、パートさん含め、人の入れ替わりを経て今があります。
もちろん自分から退職を希望されたケースもありますが、私のほうから解雇予告手当をお支払いしたうえで辞めていただいたケースもあります。
では、後者の「会社を辞めていただいた」理由は何なのか。
端的に言うと、本業に集中するためです。やや厳しい表現になりますが、会社とは“儲けるための団体”であり、決して“仲良しグループ”などではありません。
そして売上を上げ続けるためには、その担い手である従業員が要となります。だからこそ、しっかりと人材に投資していかねばなりませんし、一方で費用対効果を考えることも必要となります。
例えば、“売り手市場”が続くなか、私の事務所のように規模の小さい税理士法人を選んでくださるのであるならば、なるべく報酬をアップし、ムダな残業はなくす。そのぶん、仕事には集中してもらいますし、ミスに関しては苦言を呈することもありますが、仕事に関係ない雑務は課さないようにしています。
例えば掃除やゴミ捨てなどに労力を費やすぐらいならば、売上につながる業務に専念してほしいと考えるからです。
中小企業における“相性の悪い”1人が及ぼす経営リスク
ただし、報酬を上げるといっても、そこは慈善団体ではありませんので、投資対象は見極める必要があります。
しっかりと売上に貢献できている従業員を大事にするからこそ、そうではないと判断した方には、申し訳ないですが辞めていただく決断をしなければならないこともあるわけです。
無論、当事務所のやり方や方針に合わない、というだけで、その方の能力を否定するわけではありません。ようは相性の問題だと思います。経営と従業員、両者のメリットを考えるならば、別のところに移ってもらったほうが双方にとって幸せにつながることもあると思うのです。
また、1,000人規模の会社ならば、1人ぐらい“相性の悪い”従業員がいても問題ないかもしれません。ですが、10人程度の規模の会社で1人でも“異分子”が存在すると、重大な経営リスクにもつながりかねません。
会社とは何か。どうあるべきなのか。そこを見つめ直したうえで、従業員の採用、雇用についてもシビアに考えることも時に必要なのではないでしょうか。
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