飲食店で4年間の消費税免税を活用するなら、ココに注意!
事業をスタートし、売上が上がってくると気になるのが消費税の納税。納税義務が免除となる“恩恵”を最大限に活用するには、いくつかの注意点があります。ここではわかりやすく飲食店を例に挙げ、最大4年間の免税を活用するためのポイントについて解説していきます。
――飲食店を始める際に、まずは個人事業主でスタートするか、会社にするか。ゆくゆく消費税負担の観点からも、どの選択肢をとるべきか迷っています。
五島 消費税は、基準期間といって、原則的に個人事業主の場合は2年前、法人の場合は2期前の事業年度の課税売上高が1000万円以下の場合、納付義務が免除されます。
これは、個人事業主から新規に法人を設立した際も適用されます。
――では、最初は個人事業主で始めて2年間、その後、法人化することで、最大4年間、消費税が免税になるということでしょうか。
五島 その恩恵を享受する場合、いくつか注意するべきポイントがあります。
一つが、個人事業主の場合と、法人化した場合で、税金の負担がどうなるかを総合的にシミュレーションすることです。
個人事業主の場合は、売上から経費を引いた所得に対し、所得税、住民税、さらに個人事業税が発生します。
法人の場合で、利益から社長の給与を差し引き、法人税や法人住民税、法人事業税、そして社長個人の所得税・住民税負担がどうなるか。
そもそも、経費がほとんどなく、売上が相応にあるような業種の場合は、最初から法人化したほうが節税策の選択肢が増えるケースもあります。
二つ目の注意点は、2期(年)前の事業年度の売上高が1000万円以下であっても、消費税の納税義務が発生するケースがあることです。
一つが資本金1000万円以上の法人を設立したケース。
もう一つが、特定期間といって、前年の事業年度の前半(最初の6か月間)の売上と給与・賞与支払額の両方が1000万円を超した場合も、当事業年度において消費税の課税事業者になります。
つまり、後者の場合、個人事業主、法人に関わらず、売上と人件費が1000万円を超してしまうと、消費税の納税義務が1年前倒しで発生するというわけです。
――売上が1000万円を超しても、人件費が1000万円に満たなければセーフなのでしょうか?
五島 そうですね。飲食業の場合、売上が1000万円超すケースは多いでしょうから、人件費には要注意です。
ポイントは個人事業主と法人では人件費のルールが異なること。個人事業主の場合は従業員の給与のみを換算すればOKですが、法人にした場合は自分の給与も含めて考える必要があります。
単純計算で1000万円を6か月で割ると、約166万6000円。個人事業主として2年間、さらに法人化して最大4年間の消費税免税の特典を受けるには、月の人件費がその額を超さないように、給与等支払額を設定する必要があります。
また、他の業種でも同様ですが、個人事業主から法人成りを考えるためのシミュレーション、タイミングの判断などは、自己流ではなかなか難しい。事業をスタートしたばかりで、思わぬ税負担発生とならぬよう、プロに相談することをお勧めします。