「税理士はいらなくなる」!? 情理士・ゴシマが危機感を抱く理由
「税理士は淘汰される」が口癖の所長に出会って……
「税理士なのに、“税理士はいらない”とはどういうことか?」
タイトルを見てそう思われた方も多いかもしれません。
「自分のクビしめちゃうんじゃない?」。
ええ、しかし。これは税理士であり、情理士としての紛れもない私のホンネなのです。
最初に、私がその危機感を抱くきっかけとなったのは、独立前に勤めていた税理士事務所の所長の言葉でした。
「今に税理士がいらない時代が来る」。
何かにつけて、彼はそう口にし、
「弁護士がワンストップで税理士業務も会計士業務も行うような時代が来て、税理士はいずれ淘汰される」と語っていたのです(弁護士、会計士の資格を持っていれば、税理士登録が可能)。
幸いにというべきか、当時、一種の流行りのように言われていた「士業のあらゆるサービスをワンストップで提供する時代が来る」という予測は外れたものの、彼の言葉を機に、私は税理士の存在意義をことあるごとに考え直すようになったのです。
税務調査で持って行かれるほうが顧問料より安い!?
たとえば、当時、事務所では顧問先のすべての領収書や請求書などの伝票、データをすべて1枚1枚詳細にチェックすることが義務付けられていました。
(ここまで細かく、何時間もかけてやる必要が本当にあるのか?)
大量の伝票を目の前に、私はいつも釈然としない思いを抱いていました。
当時はバブル崩壊後の長い不況期の真っただ中にあり、節税の必要があるような会社は少数派でした。税理士が言えることは「コスト削減ぐらい」という時代背景も影響していたのでしょう。
しかし、他のコラムでもたびたび触れていますが、こうした業務は大半のクライアントにとってはほとんど意味もありません(クライアントが詳細なチェックを望んでいるケースは別ですが)。
また、ある経営者に言われたことも、印象に残っています。
「税理士を入れる必要なんかない。もし税務調査が入っても、税理士に払う顧問料より、税務署に持って行かれるお金のほうが安いから」
確かに正論です。
困っている経営者ほど、税理士が貢献できる余地がある
ならば、どうしたら税理士が必要と言われるようになるのか。
税務以外の、事業再生などに興味を持ち出したのはそこからでした。
独立後、業績の悪かったA社に対しては、会議にも参加し、事業計画書を作成。販売目標も一緒に策定し、事業再建のために何ができるかを、真剣に考え、積極的に提案しました。
スクールに行き、ベンチャーキャピタリストの勉強もしたのもこのころです。
A社の業績は、思うようには回復できなかったのですが、「困っている会社、経営者ほど、税理士が貢献できる余地はある」。そこに気づいたのは、この時の経験が元になっています。
コンサルタントにはない税理士のアドバンテージとは
「お金持ちの節税」は一過性のものであり、コンサルタント会社などが実践する事業再生も、一時的な施策として高いコンサルフィーをとるものが大半です。そして、コンサルタントを雇うほどの財政的余力がある中小企業は残念ながら少数派です。
しかし、比較的低価格の顧問料で長期スタンスで寄り沿える税理士ならば、会社の数字を見ながら、経営者に伴走し、事業再生に貢献していくことも可能。そう考えたのです。
今、私が数字を細かくチェックすることではなく、会社が存続する・儲かる仕組みづくりに注力しているのもそのためです。
そして、困っている経営者に寄り沿うことにこそ、今後の税理士の活路があるのではないか。それが情理士・ゴシマの持論です。