五島流・お金の哲学「お金との上手な付き合い方」
どんなビジネスにも共通する平等な指標として“お金”を重視するべき
「世の中、お金じゃない」
「お金のために仕事をしているわけじゃない」
お金の話となると、そんなふうにうそぶく方がいらっしゃいます。
とくに、日本ではお金の話をタブー視する傾向も根強くあり、自分の給料や目標とする年収などを公言したがらない経営者も多くいます。
確かに、世の中、お金“だけ”ではありません。しかし、社会や顧客に求められる商品やサービスを提供していくうえで、「いくら儲かっているか」は外せない視点です。
なぜか。
逆説的に聞こえるかもしれませんが、冒頭のようなセリフを口にする経営者ほど、とかく社会のニーズやビジネス上の視点からではなく、自己顕示欲、エゴが先に立ってしまいがちだからです。
たとえば、
「社員にとって働き甲斐のある場所を作りたい」
「ワクワクするような新しいビジネスを手掛けたい」などなど。
もちろん、夢や理想を語るのは自由ですが、やりたいことを実現するのは、きちんと利益を出せるようになってからと心得るべきでしょう。
だからこそ、どんなビジネスにも共通する平等な指標として、お金、つまり目標とする売上や利益、年収は明確に設定すべき——私はそう考えています。
客観的な数値の目標を持つことで、「自分がやりたい」ではなく、「他人に求められる」ビジネスの基盤を確立できるはずです。
お金の余裕があってこそ、気持ちの余裕も生まれる
また、お金を持つということは、選択肢が広がるということです。
私自身、大学卒業後、将来の展望を描けずに、27歳までプラプラと貧乏生活をしていた時代もありましたし、もっと溯ると、幼少に父親が事業に失敗し、借金の取り立てから逃げるように暮らしていたこともあります。
その経験を踏まえて言えるのは、お金ですべてのことを解決するのはムリだとしても、大半のことはクリアできるということです。
また、お金がないときほど、意味なく虚勢や見栄を張ったりすることも多かったように思います。
お金の余裕があってこそ、気持ちの余裕も生まれる。感情に流されずに、ビジネスや人生そのものに冷静に向きあえるようになったと感じています。
といって、お金の魔力に踊らされ、“守銭奴”のようになってしまうと、進むべき道を見失ってしまうリスクも大。その典型的なケースがリーマンショックのような事態です。
お金があれば、世の中に自由に“分配”できる
さらに、いくら稼いでも、自分のために使えるお金の額にも限界がありますし、“あの世”に持っていけるわけではありません。
その観点では、儲けたらどう使うか。お金の使い方にも自分なりの基準を持つことが大事です。
たとえば、私は年間の目標収入額を超えた分は、寄附するようにしていますが、そこにも「将来を担う子供に寄附する」といった、自分なりの基準があります。
もちろん、「お金があるならば、すべからく寄附べし」と言っているわけではありません。ここで言いたいのは、お金を持てば使いたい所に投資ができる。つまり、お金の分配権を手にすることができる。
社員の給料などの待遇アップや、事業の新たな展開を考える際にも、可能性が広がるのではないでしょうか。
“シャキン”と背筋が伸びるお金の使い方を身に着ける
抽象的な表現になりますが、お金にはシャキンと背筋が伸びるような使い方、端的に言えば“いい使い方”がある。そう思っています。
逆にお金の使い方に慣れていない人ほど、眉唾ものの儲け話にダマされるようなことも多いように感じます。
だからこそ、経営者にはエゴや自己顕示欲を捨て、お金にフラットな気持ちで向き合い、コツコツと利益を増やすことに注力していただきたい。
その上で、ぜひ自分なりの“シャキンとした使い方”を身に着け、お金と上手に付き合っていただければと考えています。
Photo:123RF