経費の見直しより、「経営者が本当に気にするべき数字」とは?
「適正な経費の額の目安を教えてください」。
「ムダな経費がないか、見直しをしたほうがいいでしょうか」。
コスト、経費について、上記のような相談をされることがあります。
しかし、残念ながら、「適正な経費の額」「経費のムダ、ムダじゃない」にはコレといった正解はありません。これが私の回答です。
例えば、数10万円かけて、ウェブ広告を出して、うまくいく人もいれば、そうじゃない人もいます。
高いコンサルフィーを支払って、コンサルタントをつけているようなケースでも、成果が出る場合、出ない場合、どちらもありえます。
もっと言うと、費用対効果というのは、その時点ではわからず、時間をかけて見えてくるもの。結果がでないうちから、「それはムダ、あれはムダじゃない」というのはナンセンスといえるでしょう。
黒字である限り、何にどうお金を使うかは経営者の判断次第
あえて回答を申し上げるならば、「黒字であれば(黒字が見込まれると考えるなら)、何にどうお金を使っても構わない」。
そこは、経営者の考え方次第で、「どういうふうに仕事をやっていきたいか」によって、経費の使い方、その適正額は変わってきます。
例えば、同じ飲食店の経営者でも「アルバイトを含めた従業員全員に「舌で味を覚えてほしい」と、食材の仕入れも兼ねて研修旅行を年数回、必ず実践している」という経営者もいれば、「自分以外は、短時間のアルバイトで回し、味のチェックなど、重要な作業は任せない」というオーナーシェフの方もいらっしゃいます。
ちなみにどちらのケースでも、実際に相応の売上を上げていますが、うまくいっている限りは、どこにいくら使おうと構わない。
「バイトなんて、いつ辞めるかわからないのに、研修なんてムダだ」とは言い切れないのです。
飲食店の経営指標として、「FL比率(売上に占める材料費と人件費を足した額の割合)は50%以内にせよ」などと言われることがありますが、そこもあくまでも目安にしかすぎません。
とくにスケールメリットがある大規模チェーンではなく、小さな飲食店で業界平均を目指すのはナンセンス。自らがやっていけると判断するならば、50%を超えたとしても構わないはずです。
赤字の原因は、ムダ遣いより、売上があがっていないこと
多くのクライアントのケースを見ている立場から申し上げると、中小企業においては、赤字の原因は、大半がムダ遣いより、売上がとれていないことに起因するものです。
経費の額はタカが知れており、それならば自分の役員報酬を減らせばいいのです。
何回も、こちらのコラムでも書いていますが、もう1度、書いておきましょう。
中小企業の経営者が、注力すべきは、こうした細かい数字やパーセンテージではなく、あくまでも売上の額です。
たとえ、会計の知識がなくても、通帳を見れば、売上は一目瞭然。毎月の残高が、少しずつでも増えていて、新規の案件や顧客が獲得できていれば、当面は問題なし、と考えるべきでしょう。
ただし、もちろんウェブ集客に数10万円をかけた場合など、効果がないとわかったら、速攻、撤退すべき。トライ&エラー、そのうえでの決断がスピーディにできるのも、中小企業ならではのメリットなのです。