資金繰りはなぜ急に厳しくなるのか……解決のためのチェックポイント
利益が出ていても、資金ショートは起こりうる!
「黒字倒産」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。
これは、売上が上がり、利益も出ているのに、事業を継続していくために必要な資金(運転資金・固定費)がショートし、倒産してしまうことをいいます。
どうして、そんな事態が起こってしまうのか。そもそも、資金繰りはなぜ気づかぬうちに悪化してしまうものなのでしょうか。
その最大の理由は、会社における「損益」と「資金」が、全く違う概念であり、業種・会社によっても、数字(お金)の動きが異なることが挙げられます。
売上増→仕入れ代金増によって資金繰りが悪化するケース
たとえば、製造・卸業の場合、仕入れ代金(材料・製造にかかるコスト)の支払いが先行し、売上代金の回収には一定のタイムラグが生じるのが通常です。
つまり、製品を出荷して、その売上が入金されるのは3か月後だったとすると、200万円の儲けがあったとしても、2か月間は費用持ち出し状態になるわけです。
さらに、万一、取引先の1社でも入金が遅れたり、万一、売上代金が貸し倒れになったりするようなことがあれば、とくに取引先が数社に集中しているような場合、たちまち手元資金が枯渇してしまうことにもなりかねません。
また、売上が増加すると、その分、仕入代金も増加するため、資金繰りが厳しい状態が続きます。
このように、仕入れが先行する場合、決算上は利益が出ていても、資金はカツカツという状況になってしまうわけです。
入金先行なのに、「お金がない」は相当にヤバい!?
一方、小売りや飲食店などのいわゆる現金商売の場合は、支払より入金が先行しますので、業績向上が、すぐに資金繰り改善につながります。
逆を言えば、現金商売なのに「いつも手元にお金がない」としたら、業績が相当、悪化していると考えられます。
「入金を早め、支払を遅くする」……前に「資金繰り」の中身をチェック
では、資金繰りをよくする方法はあるのか。
「入金額を多くして、支払額を少なくする」。これができればカンタンですが、現実的には、「入金を早めて、支払を遅くする」ぐらいしか方法はありません。
たとえば、売上増による資金繰り悪化の対処法としては、仕入れ先に対して、代金の支払い時期を延ばしてもらうということも考えられるでしょう。
ただし、こうした場当たり的な対処法に陥る前に、まず日頃から実践していただきたいのが、「資金繰りの把握」です。
資金繰りが厳しいなら、「毎月、どの程度足りなくなるのか」「特定の月に、お金がなくなるのか」「通常は大丈夫だが、突発的な税金の支払いなどが生じると厳しくなるのか」などなど。
どのぐらいのスパンで、いくら足りなくなるのか。一時的な資金ショートなのか。加えて、会社の損益状態や規模によっても、「金融機関で借入をするべきか」あるいは「いくら借りられるか」も変わってきます。
ただただ「お金がない」「資金繰りが苦しい」と言っているだけではダメで、その「中身」をチェックしてこそ、慢性的な資金ショートからの解決の糸口も見えてくるのです。
「損益」&「資金繰り」の両方を見ることが大事!
また、仕入れが先行する場合、逆に売上が悪くなると、仕入れが減り、一時的に資金繰りが改善されることがあります。
そこで「経営がラクになった」と錯覚しないことも重要です。
とくに中小企業の経営者の場合、「手元にお金があるか」、つまり「キャッシュフロー」に関しては敏感にウォッチしていても、「損益の状況」、つまり「儲かっているのか、いないのか」については、「よくわかってない」というケースも多いのです。
場当たり的な金策に追われないためにも、「損益」を見ながら「資金繰り」を見る。会社の経営状況を把握するには、両者をバランスよくチェックすることが肝要と心得ましょう。